診療方針の一つとして、できるだけ歯を抜かない治療ということを掲げているのですが、
現実的には、抜歯をせざるをえない状況というのがあります。

歯の破折です。

最近とくに多くなってきていると思います。

完全に割れているのが目でみてわかるような場合には患者様のご理解も得られやすいのですが、
難しいのは、まだ完全に割れていない状態で、ヒビから破折の中間ぐらいの時期が診断や説明に困る時があります。

歯が割れていることを疑う要件(とくに神経の生きている歯)として、

●虫歯でもない(治療もしたことない歯)のにかなり痛い

●歯のかみ合わせの削れが多く、夜、はぎしり、食いしばりが疑われる状態(咬耗、ウェア)

●今まで痛くなかったのに、ある日より急に痛くなった
(虫歯であれば、もともとしみてたり、軽い痛みから強い痛みに移行します。)
(強くかみ合わせしたときに限界点を超えて、ヒビから割れるになり、痛みがでてきているということです。)

●中高年以上の男性、顎ががっしりしてるタイプの方が圧倒的に多いです。

●上の第一大臼歯(6番)が好発部位。最も力のかかる歯です。

●隣の7番が欠損しているとか、5番が舌側傾斜して咬んでない、反対側の臼歯がないなど
特定の歯に過剰な負担がかかってるかみ合わせ

●ブリッジなどの土台の歯 これも過剰な負担がかかっている。

などです。

 

先日も、同じ日にお二人ほど、歯の破折を原因として抜歯させていただきました。

ちなみに、どちらの患者様も、痛い→即日抜歯はしていません。
きちんと診査、説明、了解を得て抜歯に至ってます。

痛くなって最初の時くらいではまだレントゲンにもはっきりと写らずわかりにくいのですが、
マイクロスコープで見るとヒビ、クラックの発見ができることもあります。

CTで破折の診断をしてほしいという声もいただきますが、
CTはヒビ、クラックの「初期段階」の診断には、それほど有効ではありません。
(CTの解像度以下のクラックははっきり写りません。)
CTが有用になってくるのは、マイクロスコープでも見えない歯肉で隠れた「歯根」の「中等度以上のクラック」です。

かみ合わせをしている見える部分である「歯冠」のクラックの診断は圧倒的にマイクロスコープが有用です。

今回の場合もマイクロスコープの画像で説明し抜歯に同意していただきましたが、
実際には、抜歯して、破折した歯をお見せしてようやく本当に納得していただけているように感じます。

それくらい患者様にとっては今まで虫歯でもなかった歯が急に抜歯と診断されることは、
受け入れることが難しいことなのだと思います。

マイクロスコープがないと様子を見ましょうになり、肉眼で見えるよう、つまりもっと症状が進んでから
わかることなのかもしれません。

正確な診査、診断のために、上記のような症状に思いあたる方は
マイクロスコープを使用している歯科医院での歯のひび、破折の診断がおすすめです。