最近、歯ぎしりでお困りの方、歯ぎしりを原因とするトラブルにお困りの方が多くいらっしゃいます。
ここでは、歯ぎしりを原因とするトラブルやマウスピースなどの当院における治療方法についてご案内しています。

歯ぎしりによるトラブルの種類

歯が割れる・欠ける

歯はとても硬いというイメージがあると思いますが、かみ合わせで硬いもの同士でかみ合い、衝撃が加わることで、歯が割れたり欠けたりすることがあります。

歯の一部が少々かけた程度であれば、部分的につめたり、丸めたりするような簡単な治療で済みますが、
歯が三分の一程度欠けたりすると神経の治療が必要になったり、抜歯になってしまうこともあります。

特に神経の治療を行っている歯は、歯の強度も弱くなっているため、割れやすくなります。

 

金属のつめもの・かぶせものが取れる

金属(保険で用いられるパラジウム合金)のつめものは歯よりも硬いので、割れたりしませんが、歯がすり減っても、金属はすり減ってくれないため、
①かみ合わせですり減った自分の歯と金属に段差ができ、虫歯になりやすい
②かみ合わせの当たりが金属の部分だけになってきて過度に力がかかる
③金属と歯をつなぐセメントがかみ合わせの力で崩壊する(とける)そしてセメントの分の隙間ができる、むし歯になりやすい

などの理由により、取れやすくなります。

金属でも、ゴールド(保険適応外)のつめものは歯とほぼ同じ硬さにできていることもあり、
かみ合わせによる歯のすり減りと同じように、金属(ゴールド)もすり減ってくれるので、歯と硬さの違うパラジウム合金と比較すると取れにくくなっています。
(ただし、歯ぎしりの強い方にとって、よい材料ですが、金色で目立つことが欠点です。当院では目立つところに使用することはほとんどありません。)

 

セラミックや樹脂のつめもの・かぶせものが割れる

金属と違い過度な力がかかるとセラミックや樹脂(レジン)のつめもの・かぶせものは割れてしまう場合があります。

樹脂の場合は割れる場合とすり減ることもありますが、セラミックの場合にはすり減るというよりは割れてきます。
セラミックの中でもジルコニアは、歯よりも硬いので割れることは少ないのですが、ジルコニア単独だと単調な色調でセラミックの中では審美性に劣るなどの欠点も持ち合わせています。

割れるということは欠点ではありますが、金属のようにつめものと歯の間(セメントスペース)でむし歯(2次カリエス)になることは少ないです。

 

顎が痛い・あかない

かみしめにより顎の筋肉や関節が疲れ、顎(筋肉部、関節部)に痛みが出たり、筋肉の過緊張で顎が開きにくくなってしまうことがあります。

 

歯ぎしりよりも食いしばりでおきることが多く、寝ている間に咬んでいることが影響するため、一日の中では起きたとき、朝、午前中に症状がでやすいことや、歯が痛いのだけれどもどこか特定の歯が痛いというよりは、全体的に痛いというような特徴があります。

 

歯周病を悪化させてしまう

歯ぎしりと歯周病歯周病の直接的な原因は歯周病菌による感染です。

歯ぎしりは、歯周病の進行にとって増悪因子とよばれ、歯に過度な力がかかると歯を支える歯周組織(歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質)に影響が出て、特に歯の揺れを大きくさせてしまいます。

歯周病にとって、直接的な原因ではないのですが、力のコントロールは歯周病治療の大切な治療のひとつです。

 

知覚過敏でしみる

知覚過敏はかみしめにより歯の根元に強い力がかかることで症状が出やすいと言われています。

根元がえぐれてくる場合もあります。(楔状欠損)

 

 

歯ぎしり(ブラキシズム)の種類

・歯ぎしり(ぎりぎり)
・かみしめ(ぎゅーっ)
・タッピング(かちかち)

 歯ぎしりというと「ぎりぎり」のイメージですが、これは狭義の意味での「歯ぎしり」です。
上記の3種類を総合して、広義の意味での「歯ぎしり」(専門用語でブラキシズム)と呼ばれます。

それぞれについてご説明します。

歯ぎしり(グラインディング)

上下の歯が接触したまま、下あごが左右に反復運動をしている状態です。

グラインディングともよばれます。(日本語では一般的に歯ぎしりと呼ばれます。)

「ぎりぎり」「ぎしぎし」という音が特徴で、自分では気づかなくても家族やパートナーに指摘されることで自覚することもあります。

「ぎりぎり」という音は、日中起きているときに意識的に歯ぎしりをして出せる音ではありません。
これは起きているときに出せる力というものは、意識しても脳からの指令により力をコントロールしているからです。
ところが睡眠時の無意識下の歯ぎしりはこのコントロールが効かず、非常に強い力がかかっているのです。

本来の歯の先端は丸みがあるのですが、グラインディングをしている方は歯がスパッと削れたようにまっすぐになっています。また下あごを横に動かしたときに上下の歯のかみ合わせがピッタリ合うようになっています。

 

かみしめ(クレンチング)

上下の歯がかみしめてくいしばっている状態です。

クレンチングともよばれます。

グラインディングのような「ぎりぎり」音はせず、そのため自覚が少ない歯ぎしりの一つですが、朝起きたときに顎が疲れているというような症状のある方はこちらのパターンが考えられます。

グラインディングと同じように意識して出せる力よりも、睡眠時のクレンチングは非常に強い力で咬んでいて様々な弊害を起こしています。

また、かみしめは寝ているときだけでなく、日中ふとしたときに気づくとかみしめているというものも含まれます。

日中上下の歯がかみ合うのは食事の時ですが、一日の食事の時間の歯がかみ合わさる時間の合計は10分~20分程度と言われています。しかもコントロールされた力です。
この食事という通常使用の歯の役割を原因とするトラブルがおこることはほぼありません。

ところが、睡眠時のかみしめは長時間に渡り、しかも過剰な力がかかっているため多くのトラブルの原因となっています。

 

タッピング

上下の歯が小刻みに触れることを繰り返し、「かちかち」と音がするような状態です。

家族やパートナーにとっては、うるさい、眠れないという欠点はありますが、お口や歯のトラブル、症状という意味では上記2つの歯ぎしりと比べると影響は少ない症状です。

 

歯ぎしりの原因

・ストレス
・歯並び、かみ合わせ
・遺伝 など

歯ぎしりはストレスが最も大きな原因と言われることも多いのですが、ストレスが少ないはずの乳児でも歯ぎしりをしている子はいます。(歯がまっ平に削れているのでわかります。)
その一方で、子どもよりは大人の方が歯ぎしりをしている方が多いですし、年がたつにつれ多く、またその力も強く(影響も大きく)なっているようにみえるので、年齢という人生の経験を踏まえたストレスの問題は原因として大きいと思われます。

いずれにしても原因は複合的にあり、その原因論にアプローチできる画期的な処置の方法は現在のところ、ないと考えられます。

歯ぎしりの治療方法

現在、歯ぎしりそのものを止める効果的な治療方法はないと考えられます。
歯ぎしりを止めることは目標とせず、歯ぎしりによる害を防ぐ、軽減させる治療、対症療法というのが現実的です。

 

マウスピース(ナイトガード)

歯ぎしり治療で、最もよく用いられている治療方法です。

マウスピースにはスポーツ用などいくつかの種類がありますが、ここでは歯ぎしりのためのマウスピースとしてナイトガードをご案内します。

いつ使うのか

ナイトガードというその名の通り、夜間、寝るときに使用します。

日中のくいしばり(TCH)が気になる方は日中も使っていただいてかまいません。

上下の歯が直接かみ合わさらないことで、歯やセラミックが割れたりすることを防ぎます。
また、力を吸収してくれることで、歯肉、歯槽骨、歯根膜への負担を減らし歯周病(咬合性外傷)の進行を予防します。

 

ナイトガードの作製方法

通常は上あごに装着するため、
①上あごの歯全体の型取りを行い、
②1週間程度の作製期間をいただきお渡し、
夜寝るときにつけます。

①違和感があり、どうしても付けてられないという方もいらっしゃいますし、
②つけないと寝られない、むしろ日中でも映画を見るときなど集中しているときにはつけているという方もいらっしゃいます。

ナイトガードの相性や価値の感じ方は、個人差もあり作ってみないとわからないところもありますので、
歯ぎしりに困っている方は一度作ってみることをおすすめします。

材質的にソフトタイプ(シリコン状)ハードタイプ(プラスチックタイプ、樹脂タイプ)と分けられます。

費用的には保険診療の範囲でも「歯ぎしり」という保険病名がつき、保険の範囲をご希望であれば保険治療で作成することができます。

西船橋駅前歯科では保険治療のナイトガードではソフトタイプのものを作製、治療しています。

保険費用:セット時 ナイトガード代:3000円前後(再診料、管理料等除く)

特殊なマウスピースは保険外になる場合があります。

 

歯ぎしりの強い方は穴が開いたり、壊れたりします。
これはこれだけの力がかかっているのだと考えていただき、その分つけていなかったら自分の歯や顎に影響があったと考えていただいた方が良いと思います。

壊れるような場合には、むしろ継続的に作成することをおすすめいたします。

 

自己暗示療法

夜、寝るときに意識して上下の歯が咬まないように意識して、眠りのポジションにつき、「咬まない、咬まない」と自己暗示させながら眠りにつく方法です。

効果は限定的だと思いますが、簡単で、費用もかかりませんし、まずはやってみるという意味ではお勧めの方法です。

 

咬合調整

歯並び、かみ合わせを原因とする歯ぎしりの場合には、咬合調整が有効とされていますが、歯ぎしりの原因は複合的と考えられるため、これだけで歯ぎしりが止まることは難しいと思われます。

その原因を特定することも難しく、歯を削るという行為は不可逆的(元に戻すことができない)な行為のため、当院では基本的には歯ぎしりの改善のみを目的とした咬合調整(歯を削る)は基本的には行っていません。

ただし、一部の歯にだけ負担がかかり、歯の揺れがでてきている(咬合性外傷)、歯周病に影響がある場合などには、負担を減らすため咬合調整をおすすめする場合があります。

 

ボツリヌストキシン注射

筋肉の力を緩めるボツリヌストキシン製剤により、かみしめの力を弱めることができます。

これも歯ぎしりそのものをなくすものではありませんが、咬筋に使用することで、筋肉が緩みかむ力を弱め、歯が割れたりくいしばりによる顎(筋肉)のこわばり、かみ合わせによる痛みを少なくすることができます。
美容外科で行われるエラに対するボトックス治療と内容的には同じですが、美容外科はエラを小さくすることが目的で、歯科では、かむ力を弱め、くいしばりによる害を減らすということが目的で施術が行われています。

ボトックスに代表されるボツリヌストキシン製剤の効果は3~6か月です。
そのため、効果があると認められた場合には定期的な治療がおすすめです。

西船橋駅前歯科でも取り扱いをしていますが、ご希望の方にはしっかりとカウンセリングをしてからの施術となります。